特許庁では、事業で活用される知的財産の包括的な取得を支援するため、「まとめ審査」を平成25年4月より開始しています。
「まとめ審査」とは、簡単に言うと、新規な事業や、国際展開を見据えた事業に関連する製品やサービス等を構成するための複数の特許出願からなる出願群(意匠登録出願、商標登録出願を含んでもよい)の審査・権利化のタイミングについて、特許庁と出願人とがスケジュール調整を行いながら、出願人が希望するタイミングでの審査・権利化を目指す施策です。
しかし、どんな出願群でも対象になるわけではなく、以下(1)から(3)に示す要件をすべて備えていなければなりません。
(1)(原則として、審査着手前の出願であること。
(2)出願群に含まれる特許出願のうち、少なくとも1つは「外国関連出願」「実施関連出願」いずれかの要件を満たしていること。
(3)新規な事業や、国際展開を見据えた事業の中に位置づけられる特許等からなる出願群であること。
なお、各要件については具体的な条件がさらに決められていますので、詳細は特許庁ホームページ(下記アドレス参照)でご確認ください。
まとめ審査を希望するには、所定の申請書を特許庁に提出します。ちなみに、まとめ審査の申請をできる者は、出願群に含まれる出願を行っている出願人です。出願人が複数いる場合には、一の出願人を選定し、選定された出願人が申請を行うことができます。
申請書の記載事項は特許庁で審査され、まとめ審査の対象となるかならないかの連絡が出願人にされます。まとめ審査の対象となった場合、出願人と特許庁側の担当者との間で、事業説明、面接(必要に応じて実施)、審査着手のスケジュールについて調整を行いながら、審査が進められます。
これだけでも、まとめ審査は手続きが少々面倒な印象を受けますが、特許庁側の担当者に対して、事業説明や面接ができるという点は、権利化という側面で見ただけでも、出願人にとって有利な点があるように思います。
新規な事業を開始するには、事業戦略として、特許、意匠、商標等の知的財産について包括的に権利を取得することは大変重要です。事業開始のタイミングに合わせて、その事業に関連する一連の出願群について、タイミング良く権利化することができれば、その事業を有利に進めることができます。そのような事業戦略の一つとして、「まとめ審査」を利用してみてもいいかもしれません。